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生命保険大手八社の総資産は145兆円近くありますから、総資産に対する不良債権の割合の3%程度にしかすぎませんが、生命保険業界全体では億円を超える不良債権を抱えていると推測されており、けっして小さな金額ではありません。 保険資金の運用環境の悪化は、まず保険資金の運用利回りの低下となって保険会社の経営を圧迫します。
低金利水準の不況下では株式相場が低迷し、株式の含み益が減少します。 企業の資金需要が減退し、貸し出しが伸びず、貸出金利も低下します。
その半面で、低金利の預貯金などが増加します。 さらに円高による外貨建て資産の目減りも生じます。
他方、保険契約に関わる動向にも生命保険会社にとって好ましからざる要因があり、経常利益が減益となる会社多くなってきます。 そして、ついに1994年3月期決算では、戦後の混乱期などを除いて生命保険会社としては初めての経常損失を、海外投資の失敗などによって計上する会社も出てきました。
また契約募集面では、1980年代に高利回りを売り物にして急増した一時払い養老保険や、すでに今日では死語に近くなった「財テク」目的の企業年金保険の販売を、抑制したり、打ち切る動きも出てきました。 全体的に保険資金の運用利回りが低下すると、これが必然的に生命保険料と契約者配当にも波及してきます。
生命保険各社は、1993年度には、事実上、戦後最低水準の3%台への運用利回りの低下によって、あらかじめ保険資金の投資、運用によって生じる利息、配当収入について見込む利回りで、これが高ければ高いほど、保険料を安くすることができる予定利率を引き下げざるをえなくなり、その後は、ほとんど毎年のように保険料を引き上げることになりました。 生命保険への世帯加入率が9%を超えるという市場飽和状態にあり、しかも個人所得が伸び悩む中での保険料の引き上げは、既契約の解約の増加と契約転換分を含む新契約高の減少をもたらすことになりました。
企業年金保険の生命保険会社への資金運用委託も減少し、大口の解約が続いています。 また保険資金の運用利回りの低下は、保険料の引き上げに先立って、安全性を見込んで高日に計算されている保険料の事後的な調整分に相当する契約者配当の連続しての引き下げとなって、保険契約者に不利益を与えることになりました。
さらに、これらの要因が相乗的に作用し、1990年以降、解約・失効率の上昇傾向が続き、1990年には、生命保険全社の収入保険料が戦後初めて前年度実績を下回る不振に陥るなど、収入保険料の伸びも頭打ち状態になりました。 損害保険業界にとっても、バブル経済崩壊の影響は、生命保険市場ほどではないにしても損害保険市場の成熟化もあって甚大でした。

1989年以後、船舶保険を除く主要な保険種目の収入保険料の増収率がほとんど減少または停滞し、一時、元受収入保険料の約4%を占めていた積立型の長期保険の収入保険料の割合も、1992年には約3%にまで低下します。 そして1992年の一年間は、台風などによる被害も重なり、ことに1991年の台風19号では、一つの災害による一国の支払い保険金額としては世界最大級の約57億円を支払ったほか、長年にわたって赤字を計上している国際再保険取引においても、ヨーロッパ、アメリカを襲った暴風雨など、多発した巨大自然災害に対する支払い再保険金が増大し、事業損羽益が連続して赤字になりました。
またバブル崩壊後、資金運用環境が悪化する中で、4億円前後の黒字で推移していた事業外損益についても、1992年には32億円を切り、さらに93年には2億円を切るまでに減少した上、不良債権の償却もあって、95年度までの7年間、連続して当期利益が減益となりました。 ちなみにバブル絶頂期の1989年度には、損害保険全社の総資産は前年比15%増の23兆77億円になっているのに対し、95年度末の総資産は前年比3.5%増の29兆45億円にとどまっています。
5年代後半以降でもっとも低い伸びになりました。 同年度の損害保険大手五社の公表不良債権(破綻先債権、延滞債権、金利減免債権の合計額は約1658億円になっています保険産業における規制緩和と消費者利益保険業法改正の背景日本の保険業界は、長年にわたり大蔵省による保護と一体化した厳しい監督、規制行政のも消費者から見た保険産業の課題と展望とに置かれてきました。
しかし、その一方で、人口の高齢化、ニーズの多様化、高度情報化、高学歴化、国際化などの諸現象が急速に進行し、保険業界を取り巻く環境も変化し、保険行政も新しい時代の要請に何らかの形で応えざるをえなくなってきました。 新保守主義が欧米諸国で台頭し、日本でも、英米から輸入された形で自助努力論が盛んに唱えられるようになりました。
生命保険はそのための制度の典型とされています。 しかし、欧米のもともとの自助努力論者の姿勢は、現代のそれとは少し異なるようです。
アメリカ独立戦争の前後に活躍した政治家であり、科学者であり、著述家であり、実業家でもあったBは、自助努力論者の一人でした。 ところが,彼は相互扶助論者でもあり危険に陥った場合にはお互に協力して荷物を運んで安全にすることを目的とする組合をつくり、さらにそれを発展させて消防組合をつくっています。

一方、イギリスでは、ところが自助論の結びは人は宇宙の間にあって、独り立つものにあらず、互いに相依頼し関係するものの一分なりとなっています。 対応するための有力な手段として検討されるようになりました。
保険業界に競争原理を導入することによって、保険事業経営の効率化、合理化を促進し、消費者および保険加入者の利益を増進するという考え方がこれです。 1970年代に出された三つの「保険事業のあり方について」の保険審議会答申以来、ことあるごとに、その具体化が議論されてきました。
こうした経緯を踏まえ、8年代から推進されていた金融自由化、規制緩和政策に沿う形で、保険審議会は、92年の答申「新しい保険事業の在り方」において、従来より踏み込んだ提言を行うとともに、94年には、保険審議会法制懇談会報告「保険業法等の改正について」を大蔵大臣に提出しました。 そしてようやく、39年以来半世紀以上にわたって日本の保険産業に対する公的規制の根幹をなしてきでいた保険業法の改正案が、95年に国会に提出され、96年から施行されました。
保険業法改正と消費者利益民営保険制度の改善と保険行政に関する重要事項について調査、審議し、大蔵大臣に意見を述べる保険審議会は、1959年に設置された大蔵大臣の諮問機関で、学識経験者、業界人、消費者などによって構成されています。 そして、これまで保険審議会は、消費者保護の視点か消費者から見た保険産業の課題と展望ら、保険加入者の利益と保険の公共性を重視した答申を多く出してきた、との評価も一部においてなされていますが、実際には、ややもすれば思い付き的で、しかも消費者保護の建前とは裏腹に保険業界の利益の代弁者であるかのような答を申を出してきでいます。
そして、保険業界も答申に沿った方向に流れてきました。 いわば保険業界は、大蔵省の規制という名の保護を受けつつ、目覚ましい発展を遂げてきたわけです。
それが一転して規制緩和の方向に急激に向かうとすれば、当然、それなりの理由がなくてはなりません。

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