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「朝はベッドから引きずりださなくちゃ起きないし、シャワーを30分も浴びてようやく目が覚める始末なの。
週末になると、てこでもベッドから出てこないわ。 先週の土曜日なんて、午後3時まで寝てたのよ。
信じられる?起きてきたとき、太陽はもう西に傾いていたわ。」 思春期の子どもには、「睡眠位相の後退」が起こるとCは指摘する。
睡眠位相には、身体成熟と脳内の化学物質の変化がかかわっていると考えてまちがいなさそうだ。 身体成熟をうながすホルモン、とくに排卵や精子生産を起こす黄体形成ホルモンの分泌が増えると、メラトニン濃度が下がることもわかっている。
いまCが追求しているのは、もうひとつの興味ぶかい仮説だ。 メラトニンの分泌時間が出てくる時間が、午後10時半ごろと遅くなるので、当然夜ふかしするようになるし、朝も眠くてなかなか起きられない。
眠りを研究していて、結果に誰より驚いたのはC本人だった。 S大学の大学院生だったとき、彼女はティーンエイジャーの睡眠パターンを調べるためにキャンプを実施した。

思春期の子どもに必要な睡眠時間は、成人と同じ7時間半から8時間だと予想していたが、実際はちがっていた。 比較のために条件を厳しく決めて実験すると、ティーンエイジャーはこんこんと9時間以上眠りつづけた。
しかもそれだけ寝たのに、昼間は眠そうだった。 ティーンエイジャーは、おとなよりもはるかに眠りを必要としているのである。
その後CはB大学で行なった実験で、身体成熟期に睡眠位相の変化が起こることを発見した。 エレメンタリースクールの6年生を観察していると、身体成熟が進む子は自然と就寝時刻がうしろにずれこんでいったのである。

子どもたちの唾液に含まれるメラトニンを調べると、思春期が進むにつれて、メラトニンの分泌が始まる時間はどんどん夜遅くなっていった。 「この実験をする前は、子どもたちが夜ふかしになるのは心理社会的な要因が働いていると思われてたし、私もそう考えていた。 友達関係とか、そういったことね。」 遅くなるのは、集団が生きのこるために夜ふかしが必要だったからではないか。
「視力もよくて体力のある若者が、集団を守るために夜遅くまで見張りをすることが求められたのではないかしら。 思春期の眠りが、それ以前の子どもや、年長のおとなと異なるのは、何か理由があったはずよ」考えてみれば、それでいいのかもしれない。
子どもたちは生物学的な要因で、自然と夜ふかしになる。

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